2023年 09月 22日
過去に目をつぶる者たち
2023年 09月 21日
外国語学習に便利な時代!





2023年 09月 15日
韓国旅行エッセイ 「ハルモニのいる風景」

ソウルの夕暮れ時は人びとがせわしげに行きかい混雑している。そのハルモニと話し込んだのは偶然だった。久しぶりに会う韓国の友人たちと鍋をつつき、外の空気を吸いに一人で店外に出たとき、推し車にもたれながら裏路地の往来を見守るハルモニにが目にとまった。
目が合ったので「アンニョンハシムニッカ?」とまずは挨拶したところ、ハルモニのお話が始まった。
おそらく90歳前後と思われるご年齢であるが、美しいソウル言葉で話されるその語りは私の韓国語能力でも聞き取れた。
失礼であるが少し認知症のきらいがあるのか、同じことを数回繰り返される。そしてその分聞き取りやすい!話題は町の様子からハルモニの身の上話へと移っていった。
この路地のほら、そこに見えるでしょ、あの旅館(ヨインスク旅人宿)が私の家だよ。私はもともと旅館なんかしたくなかった。日本人が作った〇〇小学校に通っていて、将来は先生になりたかったんだよ。
でも6.25(ユギオ=朝鮮戦争)が始まって・・。釜山まで逃げて行った。そんなんで先生になる夢もかなわずじまいさ。結婚して旦那とあの旅館をやっていた。もう旦那は死んでしまった。
あんた、どこに泊まっているの?うちに泊まらないか?安いよ。
昔はお客さんが多かったもんさ。夜間通行統制というのがあって、みんな酒を飲んでいるうちにその時間になってしまい自宅に帰れないからうちの旅館に泊まったもんだよ。その頃は繁盛したよ。今は商売にならないよ。見てごらん。みんな自分の車があるだろう。家に帰ってしまうよ。ところで、あんたどこに泊まっているだい?うちに泊まらないか?
ハルモニはただの旅行者である私にたくさんのお話をして下さった。あるいは寂しかったのかも知れない。現代のソウルは忙しい街だ。みんな自分の用事で走り回っている。お一人暮らしのようだし、話をゆっくり聞いてくれる人はそういないだろう。
一方、私はハルモニの話を聞きながら身震いするような感動を覚えていた。私の貧しい知識ではあるが、これまで知りえてきた現代韓国の歴史の諸相がハルモニのお話に織り込まれていたからである。一人の生きた人間の肉声を通して聞くお話は迫力がちがう。
そして通りすがりの旅人であり日本人である私がこうしてハルモニのお話を全身全霊で聞いている。旅行は観光地巡りやショッピングよりこうした偶然の出会いが印象に残るものだ。ハルモニとの出会いはこの旅行で最も忘れえぬものとなった。
記念にハルモニとスマホで写真を撮りましょう、とお誘いすると、
「こんな年寄りの写真撮ってどうするんだ」
とブツブツ言いながらもシャッターを押す瞬間にはポーズをしっかり決めてくださった。次の旅行ではぜひハルモニの宿に泊まりたいものだ。あの裏路地にあるヨインスクに。
2023年 09月 08日
韓ドラ 愛しのバイプレーヤー(1)ク・ギョファン(구교환)
2023年 09月 07日
口頭発表の注意点(韓国語講座の受講生向け記事)

