2010年 12月 25日
大学時代の先輩が「訓民正音」を訳注されました
「訓民正音」 訳注 趙義成
(平凡社 東洋文庫 2010年 2,600円)
趙先輩は最初に私に朝鮮語(韓国語)を教えてくれた恩人です。
早稲田大学を卒業の後、東京外国語大学の院に進まれ、現在は准教授です。
みなさんは、「訓民正音」(くんみんせいおん)はご存知でしょうか?
朝鮮語の文字はいまやハングルという呼び名で知られていますね。
ハングルという文字が作られたのは比較的新しく、15世紀です。日本なら室町時代ですからかなり新しい感じがしますね。
李氏朝鮮時代(1392年~1910年)の第四代王の世宗の時代に作られたものです。
本書は、「訓民正音」解例本、その他の文献を収録し、詳細に訳注がつけられた労作であります。
「訓民正音」を読み下せば、「民を訓(おし)うる正しき音」。
つまり民衆の教化にある訳です。
漢字文化圏の一員である朝鮮においては、固有の文字はそれまで無かったのが15世紀に宮廷の、しかも王の肝入りで創作されました。
そこには、習得に手間取る漢字ではなく、民族固有の言語(つまり朝鮮語)を表記する文字が実用上必要であった、という点が一つ。
さらに本書を読むことで分かるのは、同時に正しい音を正しく表記することが朱子学的世界観念において、重視されたことが見て取れます。
つまり、憐憫の情により国王が民衆を思い作った、というのは一種の神話であり、むしろ文字を作ることが同時に観念上の正しい世界を構築することに等しいのです。
中国本国以上に儒教的であったとされる近世朝鮮。
王こそが、正しい文字を創作、発布できる、ということになります。
陰陽五行をどのように反映するか、本家である中国や漢字文化への感情など、複雑な事情をかかえながら、一大国家事業として行なわれたのがハングルの創出なのです。
韓国語を学ぶ人は一家に一冊、常備したいものです!
岐阜の韓国語教室 サンリ語学堂
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講師 舟橋寛延 韓国語能力試験・5級 ハン検・準2級
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